Phuket Day3.5 深夜5時の疑惑

2020/01/03

そして恐怖の事件が起きたのはこの日の夜中、もう朝方に近い時間だったと思う。

突然ですがTinderってマッチングアプリ知ってますか?日本ではイケメンが食い散らかしてることで有名なアプリで、イケメンでもなんでもない僕はやってもマッチしないので使ってないんですが、タイだと日本人ってだけでめちゃくちゃマッチするという話を聞いていたのでホテルでやってみた。マジでとんでもないくらいマッチする。
ただしレディボーイ沢山いるから注意して。
その中の一人の子とメッセージをしていると今まさにバングラ通りで1番のクラブILUZIONにいるという。この時間からいくの面倒くさいけど行ったらおもしろそうだな、ここから歩いて5分だしな。と意を決して眠い体を引きずりながらILUZIONに向かった。

向かう間はこれから起こる可能性を何パターンもシュミレーションしていた。そりゃあとんでもなくかわいい子がいてさ、かっこいいねって言ってくれてすんなりホテルに移動みたいな展開だったら最高だろうけど人生はそんなに甘くないことを知っている。レディボーイの可能性もあるし、もっと怖い思いをするかもしれない。でもそんな展開もちょっと期待してる自分もいた。生きてさえいれば全部ネタになる。

そんなことを考えているうちにあっという間にバングラ通りに入った。3時過ぎにもかかわらず盛り上がっている通りを横切りILUZIONの入り口でボディチェックを受ける。そのままエントランスへ続く煌びやかな階段を速足で駆け上がっていく。

中に足を踏み入れると、ここも外と変わらず、というより外以上の人口密度で盛り上がっていた。爆音でEDMが鳴り響き、ブースの前ではビートに合わせて手を上げ踊る人達、その少し後ろではドリンク片手に体を揺らす人たち、スペースのない中ショットカクテルを売り歩くお姉さん。

どこにいるんだろう。

「着いたよ」とメッセージするとすぐに返信があった。

返信には「ここにいるよ」という文章と一緒に写真が添付されていた。
2階の袖からブースを見下ろすように取った写真だった。1階から2階を見回す。あそこだなとすぐにわかった。
ドキドキしながら階段を上っていく、近くまで来たがそれっぽい人がいない。

再度「近くにいると思うんだけど。どこ?」とメッセージをすると。
「今トイレだからすぐ行くね」と返信が来た。緊張が最高潮に達しながら待つこと数十秒、彼女が現れた。

全然わかんない。見た目は写真通り。身長も自分より低い。若干ガタイが良いような気もするが気のせいかもしれない。そんなことを思っていると。「席に行こう」と僕の手を取り歩き出した。

写真を送ってきた通り2階の袖が彼女達の席で友達が4,5人一緒だった。その中で明らかなレディボーイが1名。レディボーイはレディボーイで集まるのか!?それとも普通に女の子の中にいるのか!?
どちらにせよ疑惑は強まる。席に着くように促されソファに座る。目の前のテーブルには氷の入ったバケツにコロナビールが何本も刺さっている。そのうちの一本を差し出される。一瞬躊躇したが今開けたやつだし大丈夫だろう。

ビールを飲みながらしばらく他愛もない会話をした。たいして覚えてないけど今日何をしてたかとか、いつまでいるのかとかそんなことだった気がする。そこまで色々話せるほどの英語力もないし、この後に何が起こるのか、レディボーイなのかで頭がいっぱいだった。酔ってるからか彼女の距離がかなり近い。

ふと会話が止まって目が合う。そして顔が近づいていく。

唐突に、そしてストレートに「私と寝たいの?」と聞かれた。
「そうだね。いいの?」
「うん」
「じゃあここ出ようか。」
と言って彼女の手を取って外に出た。早い。展開が早すぎる。こんなことあるのか。

取り返しのつかないことをしている気がする。こっからどうしよう。どうしようっていうかもう一個しかないよな。
「俺のホテル行く?すぐそこだから」
「なんてホテル?」
「パトンリゾート。ここからすぐだよ。」
「あぁ、でも私の家近いからそっちにしよ。ホテルは遠いから。」

あぁこれはレディボーイっぽいなと思った。ちょっとだけ説明すると、女の子を連れ込む場合、女の子に身分証の提示を義務づけているホテルがある。そして連れ込み料として数千円取られる。連れ込んだ女の子が盗みを働いたり、実は男でトラブルに発展したり、最悪人が死ぬような事件になることだってある。なのでホテルが稼ぎたいってよりもセキュリティ的な意味合いが強いように思う。
多分この子はパトンリゾートに入るのに身分証を提示しないといけないことを知ってたんだと思う。

普通ならここでリリースして終わりなんだけど、この時はここままついていってみようと思った。小さい頃から「知らない人について言っちゃいけない」って何回も言われてるのに。
バングラ通りを突き当りまで行き、ホテルとは逆の方向に進んでいく。歩いて3分程度でその場所に着いた。確かに近い。その場所の1階は昼間は商店街になっていて、2階がアパートになっているようだった。深夜なので当然商店街は1つも開いていない。全てシャッターが閉じていてそれが余計に不安を煽ってくる。ここまで来ちゃったけど怖すぎる。

商店街を奥まで進むと2階に上がる階段がある。その階段の前にはコード式の鍵付きの扉がある。意外とセキュリティがしっかりしている。けどそんなことで安心はできない。
そのまま階段を上がり彼女に付いていく。1つの部屋の前で止まり、鍵を開けて部屋に入っていく。後をついて部屋に入る。中には誰もいないようだ。ここに何人か乗り込んできたら終わりだな。

部屋はワンルームにバスルームがあるだけの小さな部屋で、部屋はダブルベッドと化粧机でほとんど埋まっていた。
話を聞くとここは彼女が借りているのではなく、友達が借りていて、その友達がどこか別の国に行っている間に彼女が借りているようだった。
時間も時間だったこともあるのだろう、部屋に付くと直ぐに彼女はベッドに横たわってしまった。

「さみしいから一緒に寝て欲しい」

寝るってそういうことね。本当に寝るんだ。この時怖すぎて性欲なんて全くなかったし、早く帰りたい一心だったのもあってちょっとだけ安心したのを覚えている。
プーケットという世界的な繁華街のクラブで友達と派手に遊んでても満たされないのはどこも一緒だな。
まぁいっかと思いとりあえず横になる。ここからはどうやって帰ろうかなぁとずっと考えていた。
少しの間横になっていると彼女がくっついてくる。そしてそのスキンシップがだんだんと激しくなってくる。
「脱いで」と言われ、言われるがままに服を脱ぐ。
でも向こうは脱ごうとしない。あぁこれはレディーボーイかな。どんどん確信に迫っていく。
さらにことが進み、生々しい話だが下に手を入れようとすると今までにないくらい必死に拒否された。
あぁこれはレディーボーイだな。

申し訳ないがこれ以上は無理だな。帰ろう。
進みそうになることを止めて、しばらく一緒にただ横になる。
タイミングを見て「明日朝から予定あるから帰るね。」と言って帰る準備をした。
「なんで?」
「明日朝から予定あるから帰って寝ないと」
と言って半ば無理矢理部屋を出て一階へと急いだ。

ホテルへの帰り道。鬼Lineと鬼Callが止まらなかった。
「戻ってこい。CCDカメラの映像があるから。警察に提出すればおまえは逮捕される。」
こんなのがずっと続いてた。

ホテルに戻ったのは朝の6時。その日は7時起きなのですぐにベッドに倒れ込んだ。
その時はとにかく怖かったけど今思うとちょっとかわいそうだったかなという思いもある。
ちょっと後味の良くない体験になってしまったけど、なにより無事でよかった。
本当に知らない人についていくのはよくないよ。
みんなも気を付けてね。



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